働かないふたり 吉田覚

しれっと更新再開。何年ぶりだ?

「働かないふたり」はニートの兄弟の日常を送る短編連作?っていうのだろうか。
通常は1ページひとネタ、長くても数ページで終わる。

昔はタイトルが気になったら、とりあえず何も考えないで手に取って読み始めていたけれど、最近はいったん自分の中で内容を予想してから本を開くようにしている。
読む前の予想では、もっと暗い、世の中から隠れて暮らしているようなネガティブな話かと思っていた。
実際は底抜けに明るい妹と、底知れない何かを持っている兄と、この兄妹を取り巻くあたたかい友人たちの、ほのぼのハートフルニートストーリーというなんとも不思議な漫画だった。

ただ働きたくないからニートをしている妹とは対照的に、兄は恐らく働ける、しかも優秀な類いの能力を持っていながら、確信的にニートを選択している。
この兄と妹の絶妙なコンビと、子どもたちを𠮟りこそすれ愛情を持って接する母、ただひたすらに優しい父という家族構成が、この物語を明るく、それこそ小学生の夏休みのような日々に感じさせるのだと思う。

秀逸なのが少しずつ現れる新キャラクターたち。
兄の友人の丸山、隣に住む一見しっかりしたOLの倉木さん、妹の学生時代の友人たち、近所で兄が偶然知り合ったお婆さん、これまた偶然知り合ったシングルマザーなど、出てくる脇役たちと兄妹が接するたびにこの兄妹のさらなる魅力が見えてくる。
個人的なイチオシは、この兄妹が好きすぎて最新ゲーム機とソフトを献上し「いつでも遊びにきていい」権利を獲得した倉木さん。恋愛感情が微塵も感じられないのがとてもいい。

対照的に、父の会社の部下戸川さんと兄の物語は、なんともいえない思いが、ノスタルジーではなく、カタルシスとも違う何かを感じざるを得ない。
デジャブやコンプレックスといったほうが近いかもしれない。
兄に憧れ、嫉妬し、自分を見失っていく光景は、いつか見た自分の姿のようで胸が締め付けられる。
ただ、また、何かを書きたいという気持ちを思い出したから、今日このブログは更新されたのだろう。

随分と余計なことをいろいろ書くようになった。照れや見栄といったものが昔に比べればなくなったから、書けるようになったことも多いのだろうか。

ほな、また。