天冥の標

この国の国民は人間に囲まれ過ぎているいっぽう、アジアの多くの都市よりも恵まれた環境に生きており、外因に害される心配がないので、人間関係以外のものが見えなくなっている。興味があるのは自分とつながりのあるごく狭い世界だけ。(中略)ほとんどの人が自分の周りに壁を作り、壁の外のことは関係ないと考えている。ただ壁の内側に入られたと感じたときだけ、昨日の施設で目撃したように、猛然と反撃してくるのだ。

天冥の標 二巻 第三章より