どうやったら部長になれますかね?

三時間のうちのほとんどを焼酎の水割りを作ることに費やした

「珍しい名前だね」
「え?いやぁのべ村ってのがありましてね、埼玉の奥地に」

何度も繰り返されたやり取り
笑顔を崩すことなく頭を使うことなく言葉を吐き出す

作る、作る、ひたすら水割りを作る
まだコップに半分残っててもひったくって水割りを作る


席替えタイム
部長が隣の席にくる

しばらくして、部長が会話から漏れる


今。


「部長」
「ん?」
「アイさん、やめるんですか」
「うん」
「こころ?それともあたま?」
「うーん、どっちかっていうと、あたまかなぁ」


言ったものの、俺にも明確な違いはわからない
酔っている
部長に愚痴る
他愛もない、辞める人への懺悔ともつかないただの愚痴


「わかるよ」


この人はたぶん、今日家に帰る頃にはもう忘れているのだろう


「あの人は」
「え?」
「あの人も、現場変わったじゃないですか」
「そうだね」
「大丈夫でしょうか」
「今は、ね」
「いつかは?」



「言うなよ」
「は?」



部長との内緒話。



「あの」
「ん?」
「どうやったら部長になれますか?」
「どうやったらなれるんだろうねぇ」


どうしようもなく嘘をつかない人だ


まだまだ水割りの日々は続く



悪くない